二人でたくさんの時間を公園で過ごした
薄雲が太陽を隠す、肌寒い一日だった。あまり気乗りしなかったけれど、息子の退屈を紛らわせるアイデアがなかったので、服を着替えて散歩に出かけた。
まずは一番近い公園を歩く。椿の木の下に花が落ちて、そこだけ鮮やかな円を作っていた。踏んでみたいと思う。遠くに見える微かな赤い粒は、梅の蕾だろうか。そんなふうに考えているうちに、息子はずんずん歩いていくので、視線をすぐに戻した。彼にとって、遊具がない公園は通り道でしかないようだ。さっさと通り抜けてしまった。
小さな手が引っ張る方向へ付き従う。道路の側溝へすっぽりはまったまま歩いたり、縁石ブロックで平均台をやったり、駐車場の車のナンバープレートを読み上げたり、好き放題やっている。どこへでも行けるんだろうな、という気がした。理屈で言えば、やめさせるべきだ。汚ないし、危ない。でも、私は何も言わなかった。彼は、うまく言葉を理解できないからだ。それに、親が見守っているうちに、ある程度道を踏み外すことを楽しんで欲しかった。
2人だけしかいない公園に辿り着いた。息子は私のズボンを引っ張って、大きな樹の後ろに私を立たせた。それから反対側に回って、不確かな発音で「いないいないばあ」と言い出した。意図を察した私は、声を出しながら、木の影からおどけて飛び出す。右から出るか、左から出るかのランダム性がウケたらしい。息子はゲラゲラ笑っていた。
それから、すべり台で遊んだ。まずは、一回滑るたびにハイタッチをする遊びで盛り上げ役に徹した。何度かやっているうちに、滑り台で帯電した小さな手のひらから静電気が放電された。頭を撫でようとした時にもバチっと刺激を感じた。そこからは、少しやり方を切り替えた。息子が滑るのに合わせて私が並走したり、帽子を投げて滑らせてみたり、ほんの少し工夫しながら二人で楽しんだ。
ゆっくりと日が傾き、十七時のサイレンが鳴るまで公園で過ごした。ペンギンのスプリング遊具で遊んだり、ゴミ拾いをしてみたり、飛行機ごっこをしてみたりした。息子はよく笑った。本当によく笑ってくれた。
良い時間を過ごせたと思う。障害のために、日常生活では、色々とうまくいかないことが多い。だから、こうして楽しい思い出を増やしていけたら良いなと思う。