飲み会に行くべきかどうか
社会人になったばかりの頃、私は不安でいっぱいだった。大学では人間関係があまり上手くいかなかったので、上司や先輩をうまく頼れるかというのが一番の気がかりだった。そこで、私は会社の飲み会に積極的に参加してみることにした。とにかく顔を合わせて言葉を交わすことで味方を作ろうとした。強面の社長の隣におそるおそる座ったこともあった。マナーを知らないと呆れられたり、クセを弄られたりと、嫌な思い出も残っているが、一定の効果はあった。仕事を振られやすくなったし、誰かを頼ることもスムーズになった。さらには、休日に一緒に過ごせるくらい親しい友人を作ることもできた。飲み会作戦は大いに成果を上げたと言える。
コロナウイルスが流行した頃に、考え方が変わった。リモートワークが推奨されるようになり、わざわざ飲み会のためだけに出かけるのが億劫になってしまった。それに加えて、私のポリシーにも変化があった。結婚したことで、自分の家族や旧友以外に関心を持たないことに決めたのだ。一緒に働く人の性格、趣味、価値観、いずれも興味を持たなくなった。自分のことを話すのをやめ、酒を飲むのをやめた。ランチに行くのも一人にした。気を遣うことが激減して、過ごしやすくなった。代わりに、共感することが減り、家庭以外での疎外感は強くなった。あまり人が寄ってこない。話しかけられない。飲み会に出ても退屈することが多い。そのうち、飲み会の参加を断るようになった。
2024年現在でも、人間関係は割り切って仕事をしている。仕事をする上で差し支えることはほとんどない。もちろん、信頼関係を積極的に作ろうと努力してきた時期に比べたら、人に話しかける心理的抵抗は大きい。それでも、少しの勇気を出せば済む話だ。
だが、この路線にも少しの不安がある。もし、自分のポジションが管理職に変わった場合のことだ。管理職の業務にはピープルマネジメントが含まれる。一緒に仕事をする人のやる気を引き出したり、得意なことを伸ばしたりしなくてはならない。そのために、人に興味を持ち、人を知る必要がある。得意なことは何か、大事にしていることは何か、やりたいことは何か。業務外のコミュニケーションは、それらを知る格好の機会とも言える。しかし、現在のポリシーを継続している限り、その機会は来ない。
とある管理職が言っていたことを思い出す。組織を束ねる人物がまずやるべきことは、自分の人柄を知ってもらうことだ。人柄を知ってもらわないと、信頼関係を作れない。同じ方向を向くことができない。ビジョンを共有できない。まずは自己開示をすることから始まる。そんな風に強調していた。
私が管理職になるとしても、できればポリシーを変えずに生きていきたい。だから、まずは業務内でできることを改善していきたい。1on1や自己紹介を入念に準備することから始めようと思う。このアプローチがうまくいくかどうか、今はわからない。もし上手くいったら、その時まとめてみようと思う。
最後に、あなたが飲み会に行くべきかどうかを考えてみよう。私の答えは、場合による。あなたが人の繋がりを求めているとか、職場の人々と仲良くなりたい、上手くやることに自信がないというのなら、参加した方がよい。時間、お金、気遣いを消費するのにふさわしいリターンがある。もちろん、そのときは、自分から積極的に話しかけたり、自分の話を聞いてもらう努力をしなければならない。
もしそうではないなら、飲み会には行かなくても良い。人に興味がないとか、別なことに時間を使いたいとか、職場でうまくやる自信があるなら、飲み会は避けて生きることができる。そのことによって、疎外感を持ったり、損したりすることがあるかもしれないが、致命的になることはない。私の体験からすると、それくらい選択の自由はある。半年に一回だけは出てみるとか、歓迎会だけは出てみるとか、バランスを取る方法もある。そもそも固定のポリシーを持つ必要もない。今日は体調が良いから行きたい、今日は気分が悪いから行かない、そんな風に気まぐれでも良い。好きなようにやってみるのが良いと思う。